副業持ちのふるさと納税、シミュレーション合ってますか？

はい、副業収入（所得）もあなたの総所得の一部ですので、シミュレーションには必ず含めて計算すべきです。含めないと、上限額を本来より低く見積もってしまい、機会損失につながります。

会社にバレるかという点については、ふるさと納税自体が直接の原因になることは稀ですが、住民税の取り扱いに注意が必要です。副業所得が20万円を超えると確定申告が必要ですが、その際、副業分の住民税の徴収方法を「普通徴収（自分で納付）」に選択すれば、給与から天引きされる住民税額に副業分が合算されず、会社に所得の増加を知られにくくなります。

ただし、この「普通徴収」の選択が万能ではない点に注意が必要です。特に、副業がアルバイトなどの「給与所得」にあたる場合、自治体の方針によっては普通徴収が認められず、本業の給与と合算して天引き（特別徴収）されるケースが増えています。
また、会社に知られるリスクとして考えられるのは、ふるさと納税の適用によって本業の給与水準に対する住民税の天引き額が不自然に低くなった場合に、経理担当者が疑問を持つ可能性です。しかし、これは副業の有無にかかわらず、高額なふるさと納税を行った場合に生じうる事象です。

所得の種類によって計算方法が全く異なります。

不動産所得（家賃収入など）
これは給与所得などと合算される「総合課税」の対象です。年間の家賃収入から、固定資産税、減価償却費、修繕費、管理費などの必要経費を差し引いた「不動産所得」の金額を、給与所得と合算して上限額を計算します。もし不動産所得が赤字なら、そのマイナス分を給与所得から差し引いて（損益通算）、全体の課税所得を下げて計算します。

株の利益（譲渡所得）
特定口座（源泉徴収あり）で取引している場合、多くは「申告分離課税」となり、給与所得とは分けて税金が計算されます。ポータルサイトのシミュレーターは、この分離課税に正確に対応していないことがほとんどです。株の利益によって住民税は増えますが、ふるさと納税の上限額計算の基礎となる「住民税所得割額」への反映のされ方が総合課税とは異なります。株の利益が大きい年は、シミュレーターの結果を鵜呑みにせず、必ず確定申告書を作成する過程で計算するか、税理士に相談してください。

RSU（譲渡制限付株式）
権利が確定（Vesting）した時点の株価で「給与所得」または「雑所得」として課税されるのが一般的です。この場合は総合課税として給与などと合算します。その後、その株式を売却して得た利益は「譲渡所得」として分離課税の対象となります。課税のタイミングや所得区分が複雑なため、これも専門家への相談を強く推奨するケースです。

どちらも上限額を下げる方向に働きますが、影響の仕方が異なります。

iDeCo

掛金が全額「所得控除」の対象となり、課税所得そのものを引き下げます。課税所得が減るため、所得税と住民税が両方安くなり、結果としてふるさと納税の上限額も下がります。減少額の目安は、iDeCo掛金にあなたの所得税率と住民税率（10%）を合わせた税率を掛けた金額の、さらに2割程度と複雑ですが、年間24万円の掛金であれば、上限額が数千円〜1万円以上減少する可能性があります。

住宅ローン控除

これは算出された税額から直接差し引く「税額控除」です。この住宅ローン控除の影響は、ふるさと納税の申告方法によって少しニュアンスが異なります。

確定申告をする場合
住宅ローン控除1年目の方などが該当します。この場合、所得税の段階でふるさと納税の控除と住宅ローン控除が影響し合うため、結果としてふるさと納税に使える枠が圧迫され、上限額が大きく減少する可能性があります。シミュレーション結果を過信するのは特に危険です。

ワンストップ特例制度を利用する場合
ふるさと納税の控除がすべて住民税から行われます。この場合、上限額の計算は住宅ローン控除が適用される前の住民税額が基準となるため、確定申告に比べて上限額への直接的な影響は小さいとされています。

とはいえ、いずれのケースでも上限額が下がる方向に働くことは間違いありません。特にご自身がどちらのケースに当てはまるか不明な場合は、控除がある分、上限額は低くなるという前提で慎重に判断することが重要です。

ふるさと納税の上限額は、1月1日から12月31日までの1年間の「合計所得」で決まります。そのため、年の途中で収入状況に変化があった場合は、必ずその年の「見込み年収」で計算し直す必要があります。

転職した場合
転職によって年収が上がるなら上限額も上がり、下がるなら上限額も下がります。転職前の源泉徴収票と、転職後の給与明細を基に、年末までの収入を予測して計算します。

退職した場合
年の途中で退職し、その後再就職しない場合、その年の年収は退職時点までの給与のみとなります。退職前の収入ペースでシミュレーションすると、ほぼ確実に上限額をオーバーしてしまいます。必ず、その年に実際に得た総収入を基に、控えめに上限額を見積もる必要があります。

前年の源泉徴収票を基にしたシミュレーションは、あくまで「今年も去年と同じ状況であれば」という仮定に基づいています。転職、退職、昇進、減給、家族構成の変化などがあった年は、その都度、最新の状況で再計算する習慣をつけましょう。

残念ながら、一度完了した寄付を取り消したり、超過分を返金してもらったりすることはできません。上限額を超えてしまった分は、税金の控除対象にはならず、純粋な自己負担となります。

例えば、上限5万円のところを7万円寄付してしまった場合、超過した2万円については税金の控除は一切適用されません。自己負担は通常の2,000円に、この2万円を加えた22,000円となります。

唯一の救いは、寄付した分の返礼品は受け取れることです。そのため、「超過分は、返礼品を購入した代金だった」と考えるしかありません。

寄付額の30％程度が返礼品の相場ですので、「10,000円の自己負担で3,000円の品物を受け取った」というような事態を避けるためにも、やはり上限額ギリギリを狙うのではなく、常に一定の余裕を持たせた金額で寄付を行うことが最も重要な対策となります。

もちろん、「寄付」という行為はとても素晴らしいことですので、返礼品や恩恵のことは無視して好きな自治体を応援することも立派な経済行動です。